教育コラム

宿題をやめる学校が増加中! 学校の宿題は必要か?

宿題をやめる学校が増えている

夏休みや冬休みなどの長期期間中、日本の多くの学校では宿題が出されます。宿題の狙いは、前の学期に学んだことの復習や学習習慣の定着などです。ですが最近は、「自主性が身につかない」「やらされ感から勉強が嫌いになる」といった理由から、長期期間中だけでなく普段から宿題を廃止する学校が増えてきています。

この記事では、宿題の効果をデータでした上で、日本と世界の宿題事情や宿題のメリット・デメリットを明らかにし、「宿題」はどうあるべきかについて考えます。

宿題に意味はあるのか?世界の調査結果から

「宿題には意味があるのか」。その問いに対しては、世界でも様々な議論が交わされています。

まずは、1994年と1999年の2回にわたって行われた、米国のレテンドル教授とベーカー教授の研究チームの調査結果を見てみましょう。40~50カ国の小学4年生・中学2年生・高校3年生を対象に調査を行った結果、明らかになったのは、

・宿題の量と学力には、相関関係がない

ということでした。つまり「宿題をたくさんやったからといって、必ずしも子どもの学力には直結しない」というわけです。特に小中学生においては、宿題の効果は限定的であるそうです。少々ショッキングな結果ですね。

一方、宿題の研究においての第一人者であるアメリカ・デューク大学のクーパー教授の調査では、過去の様々な宿題の研究をまとめた上で、

・多すぎない宿題は効果(1学年×10分)

・年齢が上がるほど宿題は効果的(中高生以上)

・小学生の場合は、学力向上よりも学習習慣の確立に意味がある

という結果を明らかにしています。

よって、「宿題には意味があるのか」の問いに答えると、「適切な量であれば、年齢が上がるほど効果はある」と言えそうです。

100年以上続く“宿題”というシステム

日本での宿題の始まりは、近代的な学校の整備が進んだ明治時代とされています。宿題は学習指導要領で規定されているものではなく、出す・出さないは各学校や担任教師の任意です。音読や漢字、計算といった宿題は、家庭での学習習慣をつけさせ、知識を暗記させるのには役立ちます。しかし、机に向かわせるだけではなく、もっと子どもの好奇心や創造性を伸ばす教育が模索され始め、日本でも宿題の廃止が進んでいると考えられます。

また、現在の宿題を見直す動きは、教員の負担軽減につながるという期待感もあります。教員にとって、宿題の確認や評価は負担の一つにもなっているからです。文部科学省は「働き方改革事例集」の中で、宿題の見直しを挙げています。自主的な家庭学習の取り組みを中心にすることで、教員の勤務時間は「1日20分」「年66.7時間」削減されるとしています。

宿題がある国は世界的には少数派

世界的に見ると、アメリカ・ロシア・タイ・インドネシア・フランス・オーストラリアなど、宿題が出ない国が多いことに驚かされます。その理由は様々ですが、「子どもの負担軽減」や「学習は授業の中で完結するべき」という考えが主流なようです。なんと、フランスでは筆記型の宿題は1956年から法律で禁止されています。これは、平等を重んじるフランスならではの法律で、家で宿題ができない環境の子どもの精神的負担を少なくするための配慮です。

夏休みに限ってみると、日本のように長期期間中に宿題が出る国は珍しく、同じアジアの中国・韓国・香港は宿題が出ますが、それ以外の大多数の国では宿題を出しません。これは、長期期間中は宿題をするよりも、サマーキャンプや好きなアクティビティなど“体験”に重きを置いていることが挙げられます。

宿題のメリットとデメリット

宿題は、無駄な時間の浪費であるという主張がある一方、学習の重要な一部であり、新たな知識やスキルを習得し、理解を深める手段ともされています。宿題のメリットとデメリットを明らかにしながら、現状の宿題が果たしている役割について理解していきましょう。

宿題のメリット

メリット1.学力が向上する

学習内容を定着させることで、学力は確実に向上します。特に中学生や高校生にとって、授業だけでは十分な知識や技能の習得が難しい場合、宿題がそのギャップを埋める役割を果たしてくれます。

メリット2.自己管理能力が育つ

学習に対して、自立して取り組む態度や習慣などの自己管理能力を育てる機会となります。これは、社会人となって仕事をするときにも、大変重要となる能力です。

メリット3.達成感を味わえる
宿題をこなすことは、小さな目標を達成するプロセスであり、そのたびに達成感を感じることができます。達成感を通じて養われる自信は、子どもたちの成長と自己肯定感を育む大切な要素となります。

メリット4.保護者が子どもの学習内容を把握できる

家庭で子どもの宿題を見ることで、学習内容を把握できます。また、宿題を通じて子どものつまづきや課題も見えやすくなります。

宿題のデメリット

デメリット1.勉強に向かう姿勢を後退させる
特に公立の小中学校では、宿題は生徒間の学力差に関わらず一律に課されます。飲み込みの速い生徒にとって、理解できている問題を繰り返し解かされるのは理不尽なことです。「面倒くさい」「勉強が嫌い」という感情を助長してしまいます。

デメリット2.余暇の時間が減る

宿題に時間を費やすことで、余暇や自分のやりたい活動などの時間が減ってしまいます。

デメリット3.欺き行為を助長する

答えの丸写しやずるい行為など、欺き行為を覚えてしまう可能性があります。

デメリット4.親子関係が悪化する

宿題をやらせようと思うあまり、過干渉となってしまい、親子関係が悪化する可能性があります。

まとめ

宿題に関する調査結果によれば、「宿題の量と学力は関係がない」「適切な量であれば、年齢が上がるほど効果はある」ことが明らかになりました。宿題にはメリットもデメリットもあります。そんな宿題の効果を最大限に引き出すためには、子どもの学齢やレベルに合った、適切な分量の適切な教材を使うことが大切です。

100年以上続いている“宿題”という教育システム。必要とされる学力が変わる中、宿題のあり方も見直す時期に来ているのかもしれません。

 

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