子どもの能力を左右する決定的な時期 「臨界期」と「敏感期」
就学前の子どもは、心身の成長が著しいものです。特定の学習分野においては、習得するのに適した年齢があることも脳科学的に判明しています。
たとえば、フィギュアスケーターが3回転を繰り返すことができたり、帰国子女がネイティブ並みに発音できるのは、なぜでしょう? これらはすべて、「臨界期」の脳への働きかけが関係しているのです。
「臨界期」とは
「臨界期」とは生理学用語で、人間の脳の発達の幼児期においてある刺激が与えられたとき、その効果が最もよく現れる時期のこと。臨界期に適切な刺激を与えておけば、その後成長してからもすぐにコツをつかむことができるので、技能の上達が早くなります。
言語や数学、音感、感覚などに臨界期は存在しており、その臨界期は6歳未満。早すぎると衝撃を受ける方もいるかもしれませんが、脳科学的にまぎれもない事実です。よって、外国語や数字を処理する能力(筆算や暗算)、絶対音感を育みたいなら、3歳ころから6歳までに始めるのがベスト。言語の臨界期は、少し長くなり12歳頃までと言われています。赤ちゃんは生まれてすぐに母語を獲得し始めますから、早ければ早いほど習得はスムーズです。運動には臨界期はありませんが、感覚系が関係してくる球技や器械体操、フィギアスケートなどを得意とさせたいなら、やはり臨界期に始めるのがよいでしょう。
学習分野 | 臨界期 |
外国語 | 0歳~12歳 |
筆算・暗算 | 3歳~6歳 |
絶対音感 | 3歳~6歳 |
運動全般 | 特になし(球技・器械体操・フィギュアスケートは~6歳) |
「敏感期」とは
就学前は、家族をはじめとした周囲の大人たちによる支援が、子どもの脳の発達に大きく影響する時期でもあります。これを「敏感期」と呼び、臨界期と同じ意味の発達心理用語を指します。簡単にいうと、子どもが自ら関心をもって集中できるものに触れ、感受性を育てる時期のことです。0歳から6歳までの時期に、五感を刺激する様々な体験をさせてあげることで、感受性や表現力が豊かになります。
この年頃の子どもはエネルギーに満ち溢れていて、何に対してもイヤイヤしたり、いたずらばかりしたり、親からしたら手を焼くことも多いでしょう。しかし、そこで親がすべきことは、子どもをほめたり、遊びに付き合ったり、おいしい食事を与えるなどの温かなサポートです。そうすることで、脳の「海馬」という長期記憶を司る部分が大きくなり、記憶力がよくなり、賢い子どもに育ちます。
「臨界期」と「敏感期」のまとめ
「臨界期」「敏感期」とも、就学前の子どもの発達を指す言葉という意味では同じです。
臨界期 | 生理学用語 | 脳の発達の幼児期において、その効果が最もよく現れる時期のこと |
敏感期 | 発達心理用語 | 子ども自らの感受性や学習意欲が高まる時期のこと |
「臨界期」は体の中の機能やメカニズムを解き明かす「生理学」、「敏感期」は心と体の成長に着目した「心理学」と、観点が異なると考えてください。
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くぼたのうけん顧問
久保田 競 (くぼた きそう)
1932年大阪生まれ。京都大学名誉教授、医学博士、脳科学者。東京大学医学部・同大大学院卒業。京都大教授、同研究所所長を歴任。2011年春、瑞宝中綬章を受賞。40年以上前から赤ちゃん育脳の意義を唱え続け、妻カヨ子氏とともに久保田式育児法を考案。「脳の発達に応じた教育」をいち早く提案している。