教育コラム

“中学受験”続くブームの背景

2023年の中学受験者数、過去最多を更新

2023年の中学受験が終了しました。コアネット教育総合研究所によると、2023年度首都圏中学入試の受験者数は6万6,500人と過去最多を更新。受験率は初めて22%を超えました。受験者数は9年連続で増加しており、昨年より推定3100人増えています。

中学受験がここまで過熱している背景について、下記3点が挙げられます。

①子供一人当たりの年間教育費の増加

少子化の進行や共働き世帯の増加とともに、子どもにかける教育費は増加し続けています。参議院の調査室が定期的に発行している資料「経済のプリズム」によると、子どもの数は1970 年の 3,188 万人から 2017 年には 2,034 万人へと約 1,200 万人減り、割合では約 36%も減少しています。一方、共働きのいわゆる“パワーカップル”も増えたことから、子ども一人にかけられる教育費は 、2.4 万円から 37.1 万円へと約 16 倍に跳ね上がりました。その結果、中学受験に挑戦する世帯が増えたと考えられます。

出典:子どもの減少と相反する 一人あたり教育費の増加(経済のプリズム)

②公立校と私立校の教育格差

コロナ禍によって、オンライン授業の導入など、公立校と私立校の教育格差が浮き彫りになり、よりよい教育を受けさせたいと私立校を希望する保護者が増えました。また、私立校にはグローバル教育やSTEAM教育など、先進的な教育を取り入れている学校も多く、生徒や保護者にとっては大きな魅力です。

③高校から入学できる上位校の減少

下記のグラフから見てもわかる通り、首都圏では高校入試を廃止する私立校が増加の一途をたどっています。私立の上位校では中高一貫の学校が多く、高校募集を行う学校がかなり少なくなっていることから、中学のうちに受験させておきたいという親心があります。

出典:高等学校教育の改革に関する推進状況について(文部科学省)

いつまで続く?中学受験人気

この中学受験ブームは、いつまで続くのでしょうか。東京都教育委員会が発表した2021年度教育人口等推計によると、公立小学校児童数は2023年度まで増加傾向ですが、来年度以降は減少に転じる見込みです。

出典:公立小学校児童数・公立中学校生徒数の推移(東京都教育委員会)

コロナ禍からは抜け出しつつあるものの、続く少子化や物価高などによる厳しい家計状況、インターナショナルスクールなど進路の多様化により、今後は受験者数が減る可能性は大いにあります。しかしながら、大きく受験者数が減ることは考えにくく、緩やかな減少に留まるでしょう。少なくとも向こう2~3年は、中学受験ブームは収まらなさそうです。

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