お釣りは“補数”で考える!
◆気を使う昨今の“お釣り事情”
日本で「大きなお金」と言えば、やはり1万円札や5千円札でしょう。お店で少額の買い物をするとき、1000円札を出すのに罪悪感はありませんが、1万円札を出すときには「すみません…」と口にしてしまいます。
数年前から銀行でも両替に手数料がかかるようになり、“お釣り事情”もなかなかに気を使いますね。コンビニの店主の方も、小銭問題にはいつも頭を悩ませているそうです。
私が以前アメリカに住んでいたとき、20ドル札(日本円で約3000円)を小さな店で出すと、「おいおい、勘弁してくれ!」と言われたことが何度もありました。お釣りが用意できないからと、売ってもらえないこともあったほど。それに比べて日本はずいぶん親切な国だなと感じたのを覚えています。
◆お釣りの計算、普通に引き算?
そんな「お釣り」。今ではSuicaなどの電子マネーで「ピッ」で済む場面も増えましたが、現金で1万円札を出す場面も、まだまだありますよね。
では、6,452円の商品を1万円札で支払ったとき、頭の中でどうやってお釣りを計算しますか?もちろん、筆算で引いても構いません。
となりの位から1を借りてくる筆算です。
▢10000
ー 6452
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▢▢▢▢▢▢
でも実はもっとスマートなやり方があるのです。
◆お釣りは「補数」で筆算いらず!
それは「補数」を使うことです。「補数」というのは、「ある数を足すと決まった数になる」数のこと。
例えば5の補数 は「その数に足すと5になる数」、10の補数 は「その数に足すと10になる数」です。
1,000円のお釣りであれば、1000に対する補数を求めます。
各位の9に対する補数を求めるのですが、一の位だけは10に対する補数としてください。
例:6,452円のお釣りを補数で計算
6 → 3(9の補数)
4 → 5(9の補数)
5 → 4(9の補数)
2 → 8(10の補数)
つまり、お釣りは 3,548円。
補数を使うことで、計算がスムーズになり、くり上がりやくり下がりのミスが減らせます。
◆「補数思考」は算数の根本
では、実際に練習してみましょう!慣れてくると、感覚的にポンと出すことができますよ。
支払い額 | 商品価格 | お釣り(補数で計算) |
10,000円 | 1,376円 | 8,624円 |
10,000円 | 2,975円 | 7,025円 |
10,000円 | 3,705円 | 6,295円 |
この「補数思考」、実は算数の根本にある大切な考え方です。暗算が速くなるだけでなく、数の構造を意識する力も育ちます。
日常生活の中にある算数を、こんな風にちょっとした工夫で、「楽しい発見」に変えていきましょう。
お釣りをもらうとき、今日からちょっと意識してみませんか?
りんご塾代表
田邊 亨 (たなべ とおる)
滋賀県出身。ニューヨーク市立大学及びぺンシルバニア州立大学で学び、その後大手国際特許事務所、学習塾を経て、現在は彦根市でりんご塾を5教場運営している。2010年より、「りんご塾」として算数オリンピックに参戦し、毎年多数の受賞者を輩出している。長年の指導経験から、算数の早期教育の重要性や、算数好きな子どもを育てる家庭のあり方等についても全国で講演会を行っている。著書多数。