“観察”が運動技能の習得を早める 見る・観察する・運動する
人間は視覚的な動物です。五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)の一種である視覚は、五感の中で一番発達していて、情報の約8割は視覚で処理をしています。
さてみなさん、すべての運動は前頭前野から始まっています。動作を“観察”することで、前頭前野と運動前野がよく働き、さまざまな運動技能の獲得につながるのです。運動前野は前頭前野の隣に位置し、視覚情報などをもとにして適切な運動指令を出します。運動を観察し、実行することは、脳の運動関連領域を共有して行われているのです。子どもにスポーツや運動などをさせる前には、よく観察することで、習得が早くなると言えるでしょう。
幼児の歩行に関して、近年ジョギング大国・ニュージーランドで面白い研究が行われました。43歳時点の最大歩行速度が遅いほど、脳の容量が小さく、脳の老化も進んでいることが明らかになったのです。3歳時点での前頭前野の発達の低下が、43歳時点での歩行速度の低下と関連していることも確認されました。43歳時点での歩行速度は、幼少期からの脳の発達を反映しているのです。これは、歩行速度は脳の発達に関連している証明に他なりません。歩けるようになった子どもには、なるべくベビーカーには乗せず、速いスピードで歩かせたり走らせたりするようにしましょう。走る習慣をつけると、よりよいですね。
走ることで前頭前野が刺激され、頭がよくなることは、脳科学的にも証明されている事実です。歩行速度が遅い自覚がある大人も、ぜひジョギングを始めて、その姿を子供に見せましょう。自身の脳も鍛えられて、一石二鳥ですよ。
くぼたのうけん顧問
久保田 競 (くぼた きそう)
1932年大阪生まれ。京都大学名誉教授、医学博士、脳科学者。東京大学医学部・同大大学院卒業。京都大教授、同研究所所長を歴任。2011年春、瑞宝中綬章を受賞。40年以上前から赤ちゃん育脳の意義を唱え続け、妻カヨ子氏とともに久保田式育児法を考案。「脳の発達に応じた教育」をいち早く提案している。