“小中学生8.8%に発達障害の可能性”が示唆するもの
通常学級に通う公立小中学校の児童生徒の8・8%に発達障害の可能性があることが、2022年12月の文部科学省の調査で明らかになりました。 10年前の前回調査から2・3ポイント上昇し、35人学級なら1クラスに約3人が読み書き計算や対人関係などに困難があるとみられます。
発達障害児が増加している理由
人数の増加の背景には、下記の3点が考えられます。
①教員や親の発達障害への理解
“発達障害”という単語が一般に広く知られるようになったことで、見過ごされてきた子どもも把握され、本人や家族、教員の気づきによる診療ニーズが高まった。
②「発達障害の診断基準」の変更
小児科学・児童精神科学の分野において「発達障害の診断基準」が変更され、これまでは障害とはみなさなかったような軽症例も診断できるようになり、支援対象者が拡がった。
③子どもを取り巻く環境の変化
活字を読む機会や会話の減少など、生活習慣や環境の変化による影響も考えられる。特にコロナ禍では、休校期間中にスマートフォンでインターネットやオンラインゲームをする時間が増えるなど、リアルなコミュニケーションの機会が大きく減少した。
適切な支援ができていない現状
文科省は、「発達障害の児童生徒が増加したのではなく、教員側の理解が深まり『該当する』との判断が増えた」と分析しています。さらに、発達障害の可能性がある8・8%の児童生徒のうち、約7割が、各学校で「特別な教育的支援が必要」と判断されていませんでした。「特別支援教育の知識がある教員が少なく、適切な支援ができていない可能性がある」とし、今回の調査結果を踏まえて、通常学級に在籍しながら一部の授業は別に受ける『通級指導』の充実について年度内に取りまとめる方針です。
学校で生徒に最も近い存在は、クラス担任です。しかし日本の教員は世界一忙しいとも言われており、日々の授業やその他業務に加え、発達障害の児童生徒への対応も行うのは、現実的とは言えません。子どもと教員どちらにもプラスに作用する『通級指導』の充実が求められます。