教育コラム

「ChatGPT」が教育現場に与える影響

生活に入り込んだ「生成AI」

2022年11月に公開されて以来、世界中で話題となった「ChatGPT」。アメリカの「OpenAI」という人工知能の研究開発機関が開発した対話型AI(人工知能)です。GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、「生成可能な事前学習済み変換器」を意味します。

2023年2月には Microsoftが AIを搭載した新型「Bing」を、Googleが2023年3月に対話型AI「Bard」をリリースするなど、生成AIは私たちの生活でも身近なものとなってきました。

ChatGPTの優れているところは、主に下記の点です。

  • まるで人間のように自然な対話形式
  • 回答精度の高さ
  • 誰でも使えるシンプルな設計
  • 無料で使用が可能

では、一つ一つを見ていきましょう。

まるで人間のように自然な対話形式

ユーザーの問いかけに対して、事前学習した情報をもとに自然な日本語を生成して、まるで会話をしているかのように回答することができます。

回答精度の高さ

ChatGPTは、ネット上に存在する過去の情報を学習しています。そのため、歴史的な出来事やプログラミング、数学などの知識が回答できます。小説の続きや台本の作成といった文章生成や、テキストの要約・翻訳も可能です。そのほか、インターネット検索で調べられる内容全般について回答できます。

誰でも使えるシンプルな設計

使い方はとてもシンプル。公式サイトからアカウントを登録し、チャット画面に質問や文を入力するだけで、AIが回答を自動生成してくれます。

無料で使用が可能

OpenAIはChatGPTを無料で提供することで、多くの人々がAI技術を利用し、AIの可能性を広めることを目的としています。そのため、自社のAI技術をオープンソースとして公開し、誰でも自由に利用できるようにし、AIの発展について多くの人々が知識を深め、AI技術の倫理的な問題についても議論できる環境を作ろうとしています。

日本の教育機関での動き

ChatGPTはインターネットの登場以来のインパクトと言われ、利用者が2カ月で1億人を突破するなど破竹の勢いで広まる一方、イタリアのように個人情報の保護などを理由に使用を一時禁止したり、フランスやドイツなど規制を検討する国も出ています。一方の日本は、欧米に比べると比較的寛容な姿勢ですが、大学など教育機関では使用を規制する動きもあるようです。

国内の大学の見解

東京大学

 

学位やレポートについては、学生本人が作成することを前提としているので、生成系AIのみを用いて作成することはできない
京都大学

 

AIによる文章作成には誤った情報が含まれるリスクがあり、自ら「文章を書く」ことに伴う重要な検証プロセスが欠けている。学生には、時間をかけてじっくりと自分の文章を練り上げる習慣を身に付けてほしい
上智大学

 

レポート、小論文、学位論文等において、使用を認めない。使用が確認された場合は、厳格な対応を行う。教員の許可があれば、その指示の範囲内で使うことは可

小中学校での活用には懸念点も

「1人1台タブレット」が普及している小中学校ではどうでしょうか。一律に禁止することはしない方針で、すでにChatGPTを活用している小中学校もあります。ある問いに対して生徒が回答し、ChatGPTの回答と比較するという形で授業に採り入れている事例もあります。

一方、読書感想文や作文などの宿題をChatGPTに書かせるといったケースも懸念されており、各教育の現場では、ChatGPTに論文や作文を書かせ、子ども自身が考えることをしなくなるということが、最大の懸念点と言えそうです。

文科省がガイドラインを発表

これを受け、文部科学省は2023年7月4日、学校や有識者の意見を聞き取り、学校現場での生成AIの活用方法や注意点をまとめたガイドラインを作成しました。教育現場における利用の基本的な考え方として、「現時点では活用が有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めることが適切」との見解を示しています。

次から詳しく見ていきましょう。

⽣成AIの教育利⽤の⽅向性

基本的な考え方

  • 限定的な利⽤から始めることが適切。リスク対策ができる⼀部の学校において、成果・課題を⼗分に検証し、今後の更なる議論に資することが必要である。
  •  学校外で使われる可能性を踏まえ、ファクトチェックの習慣付けも含め、情報活⽤能⼒を育む教育活動を充実させる必要がある。
  •  教員研修や校務での適切な活⽤に向けた取組を推進し、教師のAIリテラシー向上や働き⽅改⾰に繋げる必要がある。

校外でも生成AIが使われる可能性を踏まえ、情報の真偽を確かめるファクトチェックの習慣づけなど「AI時代に必要な資質・能力の向上を図る必要がある」と指摘しています。また、教員のAIリテラシー向上の必要性も指摘しました。

AI活⽤の適否に関する暫定的な考え⽅

適切でないと考えられる例

  1. 生成AIの性質やメリット・デメリットなど、情報活⽤能⼒が⼗分育成されないままに、⾃由に使わせること
  2. 各種コンクールの作品やレポート・⼩論⽂などを生成AIに生成させ、応募・提出すること
  3.  詩や俳句、⾳楽・美術など、感性や独創性を発揮させたい場⾯などで安易に使わせること
  4. テーマに基づき調べる場⾯で、教科書を⽤いる前に安易に使わせること
  5.  教師の代わりに安易に生成AIから⽣徒に対し回答させること
  6. 定期考査や⼩テストなどで⼦供達に使わせること
  7.  学習評価を、教師が生成AIからの出⼒のみで⾏うこと
  8.  教師が⼈間的な触れ合いの中で⾏うべき指導を行わず、安易に⽣成AIに相談させること

活用が考えられる例

  1.  生成AIが⽣成する誤った回答を教材として使⽤し、その性質や限界等を⽣徒に気付かせること
  2.  生成AIをめぐる社会的論議について⽣徒⾃⾝が主体的に考える過程で、その素材として活⽤させること
  3. グループ活動の途中段階で、⽣徒同⼠で⼀定の議論やまとめをした上で、議論を深める⽬的で活⽤させること
  4. 英会話の相⼿や、⾃然な英語表現への改善などに活⽤させること、外国⼈児童⽣徒等の⽇本語学習のために活⽤させること
  5. 自分で書いた文章を生成AIで修正して「たたき台」として何度も推敲し、より良い⽂章として修正した過程・結果をワープロの校閲機能を使って提出させること
  6.  発展的な学習として、生成AIを⽤いた⾼度なプログラミングを⾏わせること
  7.  ⽣成AIを活⽤した問題発⾒・課題解決能⼒を積極的に評価する観点からパフォーマンステストを⾏うこと

学校現場での生成AI活用の適否について、具体例も暫定的に示されました。誤りを含んだ生成AIの回答を教材として使い、その性質や限界を児童生徒に気づかせるなどの活用が考えられる一方、情報活用能力が十分育っていない段階で自由に使わせるのは不適切としています。詩や俳句の創作での安易な利用や、定期考査や小テストで使わせることも不適切としました。

下記のような、学校で⽣成AIを利⽤する際のチェックリストも設けられています。

小学生の利用には「慎重な対応」

小学生の利用については、慎重な対応を求めています。主要な生成AIサービスの規約には年齢制限があり、チャットGPTでは13歳未満の利用を認めず、18歳未満が使う場合は保護者の同意が必要となります。

このため、文科省は小学生が自身のアカウントを作成し、デジタル端末を操作して利用することは想定していません。授業では、教員が生成AIを活用して得られた内容について、生徒に間接的に示すといった形が中心になるとみられます。

誰でも自由に利用でき、人々の暮らしを便利にするメリットがある半面、情報漏洩や思考力低下など大きなデメリットも伴う生成AI。教育現場で活用する場合にも、AIのリスクから子どもを守ろうという意識が必要です。

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