子どもが勉強好きになるには
人は苦しい時ほど“意味”を考えたがる
20年以上前、無名で実績もなく「りんご塾」を開塾したときには、勉強嫌いな子や勉強よりも外で遊びたい子が多く集まりました。彼らがよく口にしたのは、「なんで勉強するの?」や「これって将来役立つの?」というもの。そんな彼らと一緒に、勉強の意味についてよく考えたものです。その後、算数オリンピックの専門塾になり、金メダリストを輩出するようになってからは、そのような質問もなくなりました。みな学ぶこと・考えることが好きで、勉強することに疑問はありません。
振り返ってみると、「人生の意味とは?」などという問いを投げかけるのは、たいがい人生が上手くいっていないときでした。幸せの中にいるとき、人は生きている意味など問いません。「なんで勉強するの?」と聞く子も同じで、勉強することが苦痛な状態にいるのです。
“絶対的な評価”のもとで勉強させる
学校教育では、成績で順位が決まります。例えば1位から100位まで決まるとき、50位未満の子どもは真ん中以下という無力さを思い知らされます。この状態で勉強を好きになれというのは酷です。このように学校では、学力は相対的な評価で序列化され、下位に位置すると逆転が難しくなります。子どもを勉強好きにするには、学力を相対的に位置づけされてしまう前に、絶対的な評価のもとで勉強させるのがよいのです。
勉強することに対して前向きな姿勢を
例えば、お子さんを算数好きに育てたい場合。幼児~小学校中学年までに、学年を超えて算数を学ぶことが重要です。「りんご塾」では、子どもたちが「自分は算数が得意なのだ」と意識するよう、「算数検定」や「算数・数学思考力検定」で定期的に到達度を計っています。また塾の全国模試などで100点を取ることは、学習に前向きになるにはとてもよい手段です。100点の答案用紙を手にして、人は勉強する意味を問うことはありません。逆に「どうして塾は週に1回しかないの?」と問われることがあるでしょう。
りんご塾代表
田邊 亨 (たなべ とおる)
滋賀県出身。ニューヨーク市立大学及びぺンシルバニア州立大学で学び、その後大手国際特許事務所、学習塾を経て、現在は彦根市でりんご塾を5教場運営している。2010年より、「りんご塾」として算数オリンピックに参戦し、毎年多数の受賞者を輩出している。長年の指導経験から、算数の早期教育の重要性や、算数好きな子どもを育てる家庭のあり方等についても全国で講演会を行っている。著書多数。